E探日誌

イートローカル探検隊での日々の発見を、
隊員たちがお届けします。

ゼミナール
守り、伝える 都市の畑
2023.2.18
photo

2月のイートローカル探検隊は、都市農業について学びを深めるゼミナール!

今月のテーマは…「生産緑地」

「生産緑地」って耳にしたことはあるけれど、あまり馴染のない言葉。

今回はなんとスペシャルゲスト、元E探第一期メンバーで、ゆずの木法律事務所 弁護士・岩崎先生をお迎えし、日本一わかりやすい生産緑地のお話をしていただきました。

興味深いお話の一部をインターン生の小泉がレポートします!

 

知っておいしい、生産緑地ゼミナールの講義資料。

生産緑地って何?

今回のゼミナールはクイズ形式で楽しく学んでいきます。

まずはいきなり難題からスタート。

Q. 農地とは何でしょうか?

普段援農に行っているはずなのに、改めて考えると難しい農地の定義…

農地法ではこのように明記されています。

「農地とは、耕作(土地に労費を加え、肥培管理を行って作物を栽培すること。) の目的に供される土地をいう。」

耕作されている土地、又は耕作されていなくてもいつでも耕作しようと思えばできそうな場所を指すのだそうです。

つづいて第二問!

Q. 市街化区域と市街化調整区域の違いはなんでしょうか?

市街化区域とは、開発し、市街化を進めていくべき区域。

市街化調整区域とは、開発を抑制し、農地を大切にしていこうとする区域。

東京都全体ではほとんどが市街化区域に含まれていて、市街化調整区域は河川敷や西東京エリアの一部しかありません。

でも、東京都にはあちらこちらに農地が点在していますよね。

ここで重要になってくるのが、今回のテーマである「生産緑地制度」。

市街化区域の中にある農地で、生産緑地地区の指定を受けたものが生産緑地となるのです。

生産緑地制度によって、市街化区域内であっても計画的に農地を守り、都市住民の過ごしやすいまちづくりが実現されています。

生産緑地はなぜ必要なの?

では、そもそも生産緑地になると、どんなメリットがあるのでしょうか?

1つ目のメリットは、固定資産税の著しい低減です。

約150〜300分の1に低減されるという驚きの比率。例えば、70万円であれば2000円程度に低減されることに!

2つ目のメリットは、相続税納税猶予が受けられること。相続の詳しい説明は割愛しますが、高額な相続税をすぐに支払わなくてもよくなるのです。

一方、デメリットとして説明されるのが、原則30年間の営農義務があること。

実はこのデメリット、裏を返せば、30年間はその農地が守られますよという意味でもあります。つまり農地が確保されるという点ではとても大きなメリットと考えられます。

大バトルの末、ようやく誕生!生産緑地

では、なぜ生産緑地法ができたのか。その歴史を次は遡っていきましょう。

時は1960年代の高度経済成長期。当時は工業化が進み、地方から都市部への人口移動が加速、都市部では無計画な開発が進められていました。

もっと都市市民が住みやすい街へと発展させるため、1969年に施行されたのが都市計画法でした。この法律によって都市全体が市街化区域、非市街化区域に振り分けられます。

しかし、ここで問題が。。。市街化区域に多く残っていた農地が、宅地化すべきというプレッシャーに晒されてしまったのです。「宅地にしないと農地の税金を宅地と同等にするぞ」というあまりにもひどい待遇。結果、この時期に多くの都市農地が減少しました。

市街化区域で農業を続けるため、国と戦い続けた当時の農業者や関係者の方々。

大バトルの末、やっとのことで1991年改正生産緑地法が制定されます。そして翌年の1992年に生産緑地指定が始まりました。この期間は約20年間。長い年月を経てようやく、都市部の農地を残していこうという動きが始まったのです。

 

特に大きな転換点となったのが、2015年に制定された都市農業振興基本法。農地は都市市民にとって必要不可欠なものであり、宅地予備軍ではないことがようやく認められたのです!!

現在ある農家さんの多くが、このような時の流れを経て、世間の逆風に負けじと続けてこられたのだと思うと、改めて都市農地の尊さを感じました。

 

机を並べて、授業形式で学ぶゼミナール!沢山の質問も飛び交い、活発な議論が行われていました。

これからの都市農地はどうなる?

昨年、話題になっていた2022年問題。生産緑地指定から30年が経過し、期限が切れることで多くの農地が宅地化されるのではないかと懸念されていましたが、現在の東京では約94%が特定生産緑地に切り替え、多くの農地が守られることになりました。

しかし、安心はできません。これからも都市農地を守っていくためには、若手農業者を育て、次の世代へとつないでいくことが必要です。そのための方法として注目されているのが、生産緑地を貸す制度です。

現在の契約は、ほとんどが使用貸借と呼ばれる契約。約1~5年ほどの契約が多く、相続時には農地を返さなければならない返還特約という条件があります。つまり、現在の貸借制度は、農業を新たに始めたいと志す若手農業者にとって、長期的かつ安定的な農業経営の基盤を確保することが難しい状況なのです。

このような状況の中でも新たな挑戦をし続ける農家の方も沢山います!

その一例がこちら。

・日野市のネイバーズファーム

新規就農第1号となった、若手農業者・川名桂さん。実は、30年の賃貸借を実現し、安定的な農業経営を実現された農家さんです。カラフルトマトなど品質の高い野菜は、しゅんかしゅんかの店頭でも大人気となっています!

2022年8月にはE探メンバーで、ブルーベリー収穫のお手伝いに行きました!

 

・武蔵野市・小金井市のこびと農園

こびと農園の鈴木茜さんは、2022年4月より農業をスタートさせた新規就農者。こびと農園はいつ返却を求められるか分からない使用貸借で畑を借りているのですが…それを逆手にとって農業生産以外の様々な取り組みに力を入れることで経営を安定化させています。農業体験や小売店の経営など、意欲的に取り組む鈴木さんの活躍が今後も楽しみです。

・八王子市のもぐもぐランド

最後は、農地に農産物の加工・販売所を開設したもぐもぐファームさん。若手農家を応援したいという熱い思いで地域を盛り上げていらっしゃいます。

それぞれ個性の強い経営戦略で、都市農業を盛り上げるべく生産緑地を活用されている農家さんでした!

ここで講義は終了。盛りだくさんの内容でしたが、普段訪れている農地がこんな背景で守られてきたのかということを知り、改めて農家の方々のすごさを実感しました。

 

最後のクイズは…あなたにとって生産緑地とは?

講義を通して私が感じたことは、生産緑地が都市農業を応援していくために必要な制度であり、守るべき制度であること。市民と農業をつないでいくために必要な制度だということを強く感じました。

こんな貴重な都市の農地で農業に触れる体験ができるってすごいこと!農地の見方がまた一つ変わった気がしたゼミナールでした!

PageTop